私が「十二国記」と出会ったのは比較的遅く、2000年の頭頃(だったと思う)。
奥が、
「昔、読んでたヤツなんだけど、面白いから読んでみて。」
などとのたまいて、トイレ書庫に「月の影 影の海(上)」を置いたのを、不覚にもふらっと手に取ってしまったのである。
しかし、「月の影 影の海(上)」は、いまひとつピンとこなかった。
「月の影 影の海(下)」を読み終わっても
〜まあまあ面白いかな〜
という感じだった。
奥曰く、
「続きを読めば、だんだんハマっていくから読んでみ。」
ってなことだったので、しかたがなくという感じで「風の海 迷宮の岸」を読んだ。
た・・・泰麒・・・。
泰麒ぃ〜〜!!
・・・これがみごとにHIT!
私は、いたいけな子供物語に弱いのかもしれない。
泰麒だけではない。李斎、驍宗ともにキャラが立っていて、とても素敵な物語に仕上がっている。
とくに、漆黒の闇の中、焚火の灯りに照らされながら驍宗と泰麒が計都に寄りかかって語り合うくだりから、饕餮(傲濫)を折伏して、泰麒が初めての転変を果たすまでは、今までのお涙頂戴で濡れた頬を拭ってくれるやさしい演出。
これにコロッとやられてしまったのだ。
「風の海 迷宮の岸」でスッカリ「十二国記」の虜になってしまった私。
「次は!?次は!?」
と、奥に詰め寄った。
すると
「じゃあ、これを読みなさい。」
差し出せれた「魔性の子」
・・・
なんで泰麒が蓬莱にいるわけ?
「一番古い作品だよ」
と、語る奥。
やるな小野不由美・・・。
そうきたか。サーガですか。十二国記って「十二国記サーガ」だったのですか!
・・・サーガって・・・大好きです。
「魔性の子」を読み終わって・・・気になる気になる前後の話。
「次はこれ。」
出てきたのは、「東の海神 西の滄海」。
泰麒を苛めた雁王・・・、そして六太。なかなかいいキャラじゃないか。
Σ( ̄口 ̄;)
・・・こ・・・更夜。
ああ・・・またきたか・・・。
この当時、アニメはまだ始まっていない。
X文庫版を見ていない私は、脳内変換でキャラ画像が作られる。しかも、文面から受ける印象だけで、勝手なキャラ設定も妄想してしまうもんだからタチが悪い。
ニヒルな更夜。
アヒルな六太・・・??
更夜・・・この後どうなった?
泰麒の話は、どこいった?
悶・・・悶・・・悶
次に手にしたのは「風の万里 黎明の空(上・下)」。
ここで初めて陽子に魅力を感じることになる。
向上心の塊のようなの乙女。
・・・健気だ。
しかし、私が一番心惹かれたのは・・・梨耀さま。あの不器用な優しさは(自分で相手するのは御免こうむるのだが)なかなか良いキャラである。
そして桓たい。熊の半獣。人気がでてあたりまえ。強く、正しく、優しい、理想の男像?
「風の万里 黎明の空(上・下)」を読み終えて思ったことは、
・「十二国記」って、国づくりを考える小説か?
・小野不由美の箱庭物語?
であった。
この世が善くあるためには『慈悲の塊である生き物』が存在し、力を持っていればよい。
しかし、慈悲だらけでは世の中は成り立たないわけで、『慈悲の塊である生き物』と対になる『ニュートラルな存在』の権力者が必要になる。
それが、国王だ。
12国の国王は、麒麟が選ぶ。
麒麟は王気を感じることができ、王気を持つ者だけが麒麟に王として選ばれるのである。
しかも、このシステムには、『王が道を誤れば麒麟が病む』という『天からの警告受信機能』が付いている。
とはいえ、永遠に王として君臨することはできないようだ。
もっとも永い王朝でも、700年弱だと記されている。
永い間、王として君臨していると『天からの警告』に逆らいたくなる(死にたくなる?)のだろうか・・・?
12国記の世界に生きている人民は、麒麟と王、そして里木と卵果などによって、神の存在を身近に感じることのできる環境の中にいる。
そういう世界に生きる人々にとっては、蓬莱で言うところの「天罰が下る」という発想は、効果覿面であろう。なんたって、神様は確実に存在しているのだから・・・。
神様が確実にいる。神は悪行を許さない。
で、あれば・・・
悪人の数は少ないはずだ。
・・・しかし、12国には、悪人がけっこういるぞ。・・・なんでだろう?
悪いことをしても・・・天罰は下らない・・・のかな?
神様が監視しているのは王だけなのか?
でも、王を選ぶのは神の意思だろうから、そうとも言えないか?
王が崩御した時だけ見渡すのか?
まあ、それは置いといて、天罰が下るのは麒麟に対してである。(麒麟が死ねば、その麒麟に選ばれた王も崩御するのだから間接的に王にも天罰は下るが、直接ではない) 神は人に対して手を下すことができないのかな?
な〜んて、思ったりした。
「風の万里 黎明の空(上・下)」を読み終えた私は、もう完璧に「十二国記」の虜になってしまった。
・・・さあ、次はどんな話だろう♪
「図南の翼」
しゅ・・・珠晶ぉ〜♪
あかん。素敵なキャラが続々登場するなんて・・・卑怯だぞ。
しかも・・・舞台は、妖魔の坩堝、黄海。
・・・ああっ犬狼真君。 オイオイッ(笑
犬狼真君に身悶えつつも「図南の翼」を読破。
・・・つ・・・続きは?
「まだ、出てないよ。」
奥の非情な声。
「オイオイッ。これって1996年にX文庫から刊行されたって書いてあるぞ。もう五年も経っているじゃないか。」
私が不服を言うと
「続きが出ない訳じゃないと思うけど、なかなか出ないね。」
つれない返事。
〜なんだよ。尻切れ蜻蛉かよ。せっかく、盛り上がってきたのに〜
パタンッと本を閉じた。
そんなこんなで・・・
一年経過 ・・・
(注 その間、既存のものを何度となく読み返したことは言うまでも無い。
「黄昏の岸 暁の天」発刊
キタワァ〜♪
あぁ〜泰麒ぃ〜♪
続きが出ました。しかも、泰麒に関しての謎も解けるお話。
〜感謝♪〜
やっぱ、良いよ「十二国記」
「そこまで嵌るとは・・・。」
と横目でのたまう奥を尻目にあっと言う間に読破。
続きが欲しいぃ〜
でも、今回は間髪を入れずに短編が世に出され。短編集の文庫「華胥の幽夢」も発刊。
2001年は無事に乗り切った。
2001年は、何とか乗り切ったものの・・・。
2002年。私は、(12国記に関しては)何も無かった。
えっ?「アニメが始まったじゃないか!」だって?
私の家には、BSチューナーなどという宇宙からの電波信号を画像化するアイテムなんてございません!(簡単に言えば裕福ではない・・・と)
2003年、痺れを切らした私は、普段の精神状態なら買うはずの無い「ドラマCD」というものを、こともあろうか発売日に(奥から冷笑されながらも)購入した。
ドラマCD「夢三章」
オープニング曲「十二幻夢曲」は気に入った。これは良い曲だ。あえて言うなら(けっこうハードめな)ドラムを入れて欲しかった。
「八麒麟」「姉妹王」「地に獣」及第点かな?学生の時によく聴いたラジオドラマで免疫はできているはずなのに・・・入り込めなかった。(歳かな?)
エンディング曲「月迷風影」好みの問題だろうけど、私はこの曲は気に入らなかった。奥は気に入ったらしく、アニメを見ながら鼻歌で歌ったりしている。
桜の匂いに包まれる頃、NHK教育でのアニメ再放送が始まった。それよりも先だったか後だったか忘れたが、オンライン・ゲームが始まるという話を知ったのもこの頃だったと思う。
そして、夏の足音が聞こえ始めた頃に、あの事件は起こった。
風は唸り声を上げ全ての形あるものを切り刻み、雲は暗黒をまとって全ての光を遮り、波は壁となって押し寄せ全てを飲み込んだ。
そう・・・
蝕である。